真・女神転生4のクリア後の感想

2013年5月23日、ついに待望の女神転生シリーズの最新作が発売された。メガテンシリーズはハードごと買うというのがメガテニストの鉄の掟。ならば買おう、と意気込んでいたところに、本体同梱版も発売されるとの報。買いましょう。
待ちに待った女神転生。しかしその一ヶ月後には、更に間を空けての新作となる『さよなら海腹川背』の発売も迫る。一ヶ月で片を付ける。できるか? やるしかない。正当なメガテンシリーズ、ボリューミーにならないはずなどないのだが、なんとか時間をうまくやりくりしてやれば、一日の時間に組み込めるはず。その結果は総論にて。

総論

細かいことは以下に書くこととして、まずプレイした感想を述べる。一周目はニュートラルルートとなった。プレイ時間はなんと85時間。海腹川背の発売日なんて俊足で過ぎ去っていった。少し次の周への準備をしたが、ニュートラルならば70時間はかかるのではないか。他のルートはここまではかからないようだ。一周でこんなにかかったゲームは初めてである。序盤のあの人やこの人、盛り上がったあの場面が、既に過去のものとなり、まるで神話的時間の中をたゆたうが如し。
長い道のりだったが、紛れもなくメガテンだった。特に、東京にたどり着いた時のあの高揚感……。あれはファンであるならば心打たれる光景だろう。今回は東のミカド国よりはじまるが、舞台設定は中世でどこかメガテンとは違うものを感じていた。しかし物語が進むにつれ、これぞ女神転生という光景が次々と襲ってくる。
ゲームとしての難易度もしっかりとメガテンだ。開始三戦目でめでたく全滅をいただいた。メガテニストはここでよだれを垂らしながら歓喜の叫び声を挙げるのだ。
残念だったのは、キャラクターを活かしきれていない部分が見られたところ。あっさり死んでしまう人もいれば、終盤まで出てこなくなる人もいて、そのキャラのことを知る機会があまりない。主人公達もどこか青い。この年齢ならば仕方がないことではあるのだけれど、その青さをもっとメガテンの重暗さの中に投影できなければ、ただ慌てふてめきながら流されるだけのキャラに過ぎない。そこから終盤への繋ぎ方がやや不満。
全体的には、メガテンの伝統をしっかり踏襲しながらも、新しい試みを模索し続ける素晴らしい作品だった。スタッフの力の入りようは、その世界の作りこみ加減で十分伝わってくる。アトラス自体はこれから大変な道を歩まねばならないかもしれないが、是非折れずに、また女神転生を出してほしい。
最近は時間との兼ね合いもあり、やるゲームを極端に絞っている。その絞られた候補の中に燦然と輝く明星こそが、女神転生なのだ。
これからやろうと考えている人、めげそうになっても、とりあえず東京までは行こう。それでもだめなら仕方がない。
以下細かい部分に分けて書く。ネタバレ大いにあり。

ストーリー

全体を俯瞰して見ると、真・女神転生2を意識した展開が目立つ。東のミカド国と東京の関係、最終決戦に赴く舞台立て、どれも真2に似ている。違うのは、同じ選ばれたものといえども、主人公達は普通の人間から選抜されたという点か。そして若さ故の論の弱さ。これは年齢設定を考えれば当然こうなってもさしつかえないと思う。が、女神転生の二つの属性を背負って立つものとして、あまりにも芯が弱い。ワルターは特にカオス思想を信奉する素振りを見せるが、結局ヨナタンとくっついたり、言い負かされたりする。このへんが今までのメガテンとは違う青さなのだろう。しかしこの青さも、活かされなければただの蛇足だ。一周で全てがわかるわけではないが、見た限りではこの辺の描写不足で、いきなりのあの姿でのご対面となり、少々面食らった。忸怩たる思いを経験したりしたら、それを成長の糧としてほしいんだよ。
その点を除けば、おおむね素晴らしい。生ぬるい描写は抜きでどんどん人は死ぬ、食われる。この救いのなさの中から、微かな希望を見つけていく、人間自身の強さ。ニュートラルが一周目でよかったなと思う。大抵の人は一周目でやめるだろうから、やはり一周目はニュートラルを見てほしいという気持ちもあるが、やはり自分の気持ちに正直に生きて、東京を駆け抜けるのがメガテンの醍醐味か。
あとはホープナバール、カガなど、あまり見せ場もなくイベントの表舞台から消えた人達が残念でならない。特にカガは、あまりにも早い退場にあっけにとられるばかりだった。
今作のヒロインはノゾミでいいんじゃね?

システム・戦闘

真3を経験した人ならわかるだろうと思うが、全体の動作は非常に軽快。セーブ・ロード、全てが早い。
しかし操作系は不満な点も。第一にマップ。じっくり見ることができない。見ている間にも次々と敵がわいてくる。ハシゴなどの手前で十字キー操作を必要とする点も、テンポが悪い。そしてフィールドマップにおいては敵が非常に速く、地形を無視して追尾してくるので逃げるのがかなり困難。しかも一度消えてもすぐに復活するので、ひとつのところに移動するのにそれなりの戦闘をこなすことも。待っていればいいのだが、消えるまでがまた長い。
そしてスタッフ自身も意外に思っていたプレイヤーの反応に、東京の地理がわからないので、どこそこへ行けと言われてもすぐにピンとこないということがある。これは自分も非常によくわかる。何度も東京のあちらこちらを歩きまわった。地形自体も複雑になっていて通れない部分も多かったので、地理を頼りにしている人でも多少は迷ったのでは? なによりも、地名と位置を頭の中で合わせることができなかった。マップ画面に切り替えて地名と位置を確認できればよかった。
悪魔合体は、これまでの選択画面から、検索がメインの構成となった。これはこれで便利なのだけれど、特定の悪魔と特定の悪魔を選択、ということが直接的にできなくなったのは少し煩わしい。合体結果が悪魔のアップ画像を横に表示していくという方式は、どんなのが現れるのだろうという楽しみがあって非常によかった。
戦闘は、序盤は大変な苦労を強いられるだろう。ここで投げ出す人もおそらくいることだろうと思う。しかしメガテン、とりわけプレスターンバトルの経験がある人は察しがつくだろうと思うが、終盤は楽なのだ。ある意味メガテンの伝統とも言っていいバランスなのだが、その序盤の辛さは過去最高レベル。チュートリアル戦闘で死ぬのは基本であり、さらにミノタウロスで絶望を味わわされることだろう。しかし耐性やスキルが揃う中〜終盤では、かなり有利にプレスターンバトルを進められるようになり、楽になる。
プレスターンバトルはスリリングで非常に面白いのだが、その限界も今作はかなり見えてきたと思う。結局のところ、耐性をガチガチに揃えられると、万能属性頼りにならざるを得なくなる。そのため、そのような条件を満たした時に、わざわざ特定の行動をとるようなボスが、後半散見される。これはいただけない。いただけないけど、属性を全部塞がれると、これしかないのだ。次回作もプレスターン、とはおそらくいかないだろうと思う。

悪魔

シリーズ最多の登場数である。真3は3D化の容量の都合か、かなり少なかっただけに非常にありがたい。
今作は一部、外部デザイナーによる悪魔もある。個人的には、メガテンの世界観に合うようなものはあまりなかった。ミノタウロスやコウガサブロウが面白い感じで、ほどよいダサさもあってよかったけど、あとのはただのクリーチャーというか、神話的背景もあまり感じないようなものばかりな印象だった。特にメデューサとルシファーを見たときは言葉が出なかった。
ただ、自分が疑問なのはなぜ外部デザイナーを使ったのかのではなく、なぜ金子氏が描き下ろしてくれなかったのかということだ。SJでは描き下ろしたのに関わらず、だ。さすがに新旧金子デザインを並べるのは、最近無理があるような気もしてきた。全部とは言わないが、せめて常に新しい悪魔デザインを提供してほしいものだ。
今作をやっていて一番強く思ったのが、悪魔のレベルがかなり変わっていたことだ。まずしょっぱなからラームジェルグが出てくるということに非常に驚いた。本来ならば中盤にさしかかる頃の悪魔だ。ガロットやシャックスのレベルにも非常に驚いたが、なによりもガロットの全身絵での動きがエグいのが……。

真・女神転生IV (2013年5月23日発売) - 3DS

真・女神転生IV (2013年5月23日発売) - 3DS