2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

安部公房『砂漠の思想』

エッセイがうまい作家というのはかなりいる。しかしエッセイも小説も抜群にうまい作家というのは、実は結構少ないと思う。その中にあって安部公房は、エッセイも小説も抜群にうまい。その徹底した分析思考を、作家こそ持つべきだと思う。作家は仮説(無論学…

安部公房『けものたちは故郷をめざす』

定住することというのは、安定した基盤を築くことに繋がる。誰もが安定したいし、何か自分の身分を証明できるものを持ちたいと思う。 この作品は、安部公房の満州引き揚げ体験がベースとなっている。この経験によって彼は故郷から切り離され、地に足つかぬ生…

今福龍太『クレオール主義』

「十字路になりなさい」 境界文化における自己の存在証明について葛藤したグロリア・アンサルドゥーアの言葉だ。十字路とは様々な人や文化が出会う場所……。 安部公房作品を読んでいると、まずぶつかるのが境界の問題ではないだろうか。戦後、故郷を失い地に…