2010-01-01から1年間の記事一覧

中上健次『枯木灘』

血というものは難しい。確かに一族の結束は生む。しかし、その繋がり自身によって瓦解もするという危険も孕んでいる。 主人公の秋幸は非常に複雑に入り組んだ家系にいる。母親のフサは西村家の主人のもとで四人の子供を生み、浜村龍造との間に秋幸を生み、最…

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

以前から、分子生物学への興味は持っていた。それは昔、ある対談で安部公房が「娘に、これからはコンピュータと分子生物学を学んでおきなさい、と言っている」という話からだった。どうやら、この安部公房の炯眼は本物だったようだ。 ただ、この本に関しては…

安部公房『夢の逃亡』

安部公房の中でも、長い間空白が多かった昭和二十年代に発表された短編を集めたもの。観念的かつ思想に満ち溢れた、おせじにも読みやすいとは言えない作品から、「デンドロカカリヤ」、『壁』に至る道筋がわかってくる。 前半は、特に「牧草」なんかは安部公…

海腹川背アンロック

ようやく海腹川背・旬SE完全版の全部のおまけをアンロックした。最難関であるF57に安定の兆しが見えたので一気に追い込んだ形となった。どのみちF57のあとはF58しかないので、F57に到着すればコンティニューはし放題。F58は新ルートからも行けるので楽だった…

海腹川背の消失

海腹川背・旬SE完全版のデータが飛んだ。DSiからソフトを起動した瞬間にデータの破損を知らせる画面が……。認めたくはなかったが、そっとプラクティスを覗いてみると、今まで頑張って開拓してきたルートが全て水泡に帰した。今まで手塩にかけて育て上げてきた…

安部公房『内なる辺境』

主に正統と異端について語ったエッセイ集。とはいえ「ミリタリィ・ルック」、「異端のパスポート」、「内なる辺境」の三編しかないので、すぐに読み終わる。 人間の根源的な行動である定住と移動という観点から、正統と異端を導きだし、それを現代の国家で考…

バルガス=リョサ『緑の家』

まず読んで思うのは、その構造の複雑さだろう。複数の物語が、時間軸もばらばらに展開されていく。しかし読んでいくにつれ、それだけのことで、実はひとつひとつの物語は非常に筋の通ったわかりやすい内容だ。文章自体も平易でわかりやすい。 この物語の主人…

安部公房『死に急ぐ鯨たち』

安部公房のエッセイや対談を集めたものだが、主に扱っている内容が儀式、言語、国家、DNA、作品の在り方、他の表現方法についてなどで非常に濃い。ましてや分析狂の安部公房だ、おとなしく済むはずがない。 安部公房がオリンピックに対して嫌悪感を持ってい…

岡本綺堂『鎧櫃の血』

三浦老人による昔話という形式をとった短編集。怪談色は薄くなっており、まともに幽霊と呼べるものは「置いてけ堀」くらいじゃなかろうか。もちろん非現実的な事件も数多くある。 岡本綺堂は、明治5年の生まれだ。彼の生まれた環境には、間違いなく江戸の名…

新潮日本文学アルバム 安部公房

安部公房という作家が何を見ようとし、追い求めてきたか、その足跡を写真つきで辿っている本。 特に安部公房の文学活動の時代区分を「故郷喪失」「生きている無機物」「他者への通路」「悪夢としての都市」の四つに分類しているのはなかなか面白いし、よくま…

ロラン・バルト『物語の構造分析』

かれこれ四年ほど興味があって、今回ようやく読んだ。タイトルを見て興味を惹かれる人は結構多いように思うのだが、言語学や哲学、構造主義の基本を知っていないと、自分みたいに頭に疑問符が沢山浮かぶことになるかもしれない。 メインである『物語の構造分…

安部公房『榎本武揚』

正直なところ、この作品を読むまでは幕末の騒乱はさほど興味の対象ではなかった。ましてや榎本武揚のことなど、更に考えたことなどなかった。 この作品は、私が北海道の厚岸を訪れるところから始まる。そこで私は旅館の主人から、船で護送中に叛乱を起こした…

石の眼

海腹川背DSを買ったことは前回の記事の通りだが、それに加えてRPGツクール2000も買っていたので、読書に身が入らなかった。今年は北海道でも信じがたい暑さになったのもあるだろうが、ゲームというのは本当に時間食いだ。 しかし多少は落ち着いてきたので、…

海腹川背・旬セカンドエディション完全版

都合あってしばらく川背さんには待ってもらっていたのだが、最近ようやく購入。 色々とごたごたがあった今回ではあるが、最終的に酒井さんが手がけ、従来の旬SEに加え、新ルートとSFC版とおまけ要素を追加した、ファン待望のソフトであると言ってもいい。 や…

上村勝彦『バガヴァッド・ギーター』

クリシュナときいて反応する人はどれぐらいいるだろうか。自分は女神転生でその名前を知ったのだけれども、彼はインドでもかなり慕われているそうな。 バガヴァッド・ギーターは、マハーバーラタの一部を抜き出した聖典で、クリシュナとアルジュナの対話の形…

コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』

ものものしいタイトルではあるが、その筋では有名過ぎる一冊。かの金子一馬氏もこの本の影響を多大に受けていると思われる。 この原著の初版が発行されたのが1818年。当時のフランスにおいて噂されていた不思議な出来事や、悪魔に関することなどをまとめてい…

憧憬

最近、ギネスビールにはまっている。ドラフトとエクストラスタウトを試したが、どちらかといえばドラフトの方が好み。ギネスグラスも現在四つある。 そもそも自分はビールが苦手だ。付き合いでならなんとか飲める程度で、例外といえば餃子の時ぐらいだろう。…

岡本綺堂『白髪鬼』

岡本綺堂作品の中で、一番読みたかったのがこの『白髪鬼』の表題作だ。高橋葉介ファンならすぐにわかるかとは思うが、葉介先生は白髪鬼を漫画で描いている。そこから興味を持ったのだが、なぜか『中国怪奇小説集』を先に読んだ。次こそはと思ったら、実はこ…

引越し完了

おかげさまで無事に引越しを終えることができ、ネットも先ほど開通した。今回は先にかなりの量を運び込んでいたので、割と楽だったと思う。前回は狭いところへだったので、荷物の処分が大変だったのだけど、今回は広いところへなので、気にせずに運び込めた…

引越し

四月頃の肌寒さを引きずったままの六月となった。運動会が終わった頃になってようやく二十度を越える暖かさがやってきて心地良くなったのに、風邪をひいたらしく喉を痛めてしまった。幸い熱がないので、早いうちに片付けてしまいたい。 それから今月、引越し…

北海道の歴史がわかる本

桑原真人・川上淳『北海道の歴史がわかる本』を読了した。 ある時考えた。自分は北海道に住んでいてかつ、北海道が好きでいながら、その歴史については驚くほどに無知ではないかと。恐らくそういった理由でこの本を選んだ人も多いのではないか。 北海道の持…

安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』

安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』読了。ここ最近は色々都合があってなかなか読書が思うように進まなかった。また酒を飲む機会が多かったのもある。自分が普段好きな酒をあまり飲まないのは、読書の部分もかなり大きい。 四つの作品を収めた戯曲集…

マリオカートDS

以前から欲しいと思っていた『マリオカートDS』を買った。マリカー経験はSFCと64ぐらいしかないのだけど、DSのボタンできちんとした動作ができるのかという不安があった。しかし実際にやってみるとまったく問題なかった。 COMでもばんばんアイテムやミニター…

アリス・イン・ワンダーランド

ネタバレを含んでいる可能性があるので注意。 公開初日に映画を観に行くなんてかなり久しぶり。去年末から正月にかけて『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』と読んできた自分にとって、今回の『アリス・イン・ワンダーランド』は非常にいいタイミングで…

ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』

色々立て込んでいてペースががっつり落ちてしまっていたのだけど、今日を使ってなんとかガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』読了。『百年の孤独』なんかに見られるような短編がたくさんあって、非常に面白かった。これらの作品を見ると、あまりに…

フィン旋風

かなり忙しいというか、大変な日々が続いた。本も読めずに少しぐったりしていたのだけど、VärttinäのCDを2枚買った。『Aitara』と『Vihma』だけど、改めてVärttinäの良さを認識した。 よく民族音楽とポップスを融合させた的な紹介を見かけるのだけど、インス…

アバタールチューナー2

いい加減始めようということで、アバチュ2の封を解いた。もちろんHARD一択。引き継ぎはどの程度行われているのかはわかっていない。 最初からかなりの謎が明らかになったけど、まあ詰め込み気味なのはある程度仕方がないかな、分割になっているし。1で使って…

夢野久作『少女地獄』

彼女は罪人ではないのです。一個のスバラシイ創作家に過ぎないのです。単に小生と同一の性格を持った白鷹先生……貴下に非ざる貴下をウッカリ創作したために……しかも、それが真に迫った傑作であったために、彼女は直ぐにも自殺しなければならないほどの恐怖観…

コーヒーと怪奇談

この間、以前から気になっていた店に行ってきた。コーヒーの専門店で、小さな喫茶スペースもあるところ。小さな店内にコーヒー豆の香りが満ち溢れて、強風の中歩いてきた疲れが飛ぶようだった。 一杯250円と値段も安い。ブレンドを頼んで飲んだのだが、エッ…

安部公房『友達・棒になった男』

忠義や、忠誠も、あんまり度をすぎると、はためいわくだよ。蝦夷地に行ったら、みんな、自分が自分の殿様なんだぞ。 『榎本武揚』 戯曲というものは初めて読む。登場人物とおおまかな特徴が書いてあって、背景の指定と、かっこでどんなふうに読めばいいのか…