稗田先生!

妖怪ハンター 天の巻 (集英社文庫)

妖怪ハンター 天の巻 (集英社文庫)

諸星大二郎妖怪ハンター 天の巻』を読んだ。地を先に読んだけど、順番は地→天→水なのよね。
全体的な感想としては地の巻よりもさらに民俗学、考古学色が濃くなっている。妖怪ハンターってタイトルがミスマッチになってきた。たしかタイトルは編集部が決めたんだったか、本人も最初は納得してなかったみたいだけど。しかしもう代表作品となっているし、変える気はないんだと思う。
今回は古事記と民話が中心となっていて、地の巻より話の作り方はずっとうまくなっている。神話や民話って、知っているだけじゃそれほど役に立たなくて、やっぱいかに自分のエッセンスとして消化していくかだよね。諸星作品になると、どこまでが本当で、どこからが創作か区別がつかなくなるぐらい、世界観に溶け込んでいる。
絵も初めて彼の作品に触れたときは、あまりの独特さに多少ついていけなかったけど、今となればこの絵柄は実に彼の世界観にマッチしていると思う。異様な影のつけかたとか、ぞくぞくするぐらいかっこいい。上にある表紙も、すごいカラーだなと思ってしまう。絵画でもかじってたのかな。
今回の巻の軸になっているのは、花咲爺や生命の木、古事記天若日子神話、菊理媛など。これらからあの壮大なストーリーを組み立てたっていうのがすごいな。菊理媛の零落した姿に、有名な皿屋敷のお菊があるというのは勉強になったなあ。
古事記部分に関しては、九龍妖魔學園紀をやっておいてよかったと思うことが、この巻では多かったように感じる。あれは古事記を最初からなぞっていっているので、いやでも頭に入るんだよね、いやではないけど。特に天孫降臨部分は今回の核となっているので、知っている名前や出来事がたくさん出てきて嬉しかった。やはり予め知っているのとそうでないのとでは全然違う。古事記も読まないと……。
それにしても、諸星作品というのは他の漫画にくらべて、読むのにえらい時間がかかる。言うまでもなくその内容の濃さが原因だとは思う。解説的な文章も多いし。でも面白いのでまったく問題はない。
今月は高橋葉介もののけ草紙 弐』が出る。まず近所の本屋には入荷しないだろうから、注文するなりしないといけない。先日『夢幻紳士 回帰篇』も終了したから、いつコミックスになるか……。