ゴッタクセン! ゴッタクセン!

妖怪ハンター 魔障ヶ岳』読了した。相変わらず、漫画でありながら非常に濃く、読むのに時間がかかった。
今回は三輪山伝説をベースにした物語展開だけど、毎回ほんと感心する。神話や風習を借りて漫画を描く人は沢山いるけど、名前とか表面的な部分だけだったりすることが多い。モロ先生はどこまでが嘘か本当かわからなくなるぐらいの説得力を与えてくれる。読む前は三輪山伝説のことなんて知らなかったけど、どっぷり入り込めた。そのへんも諸星作品のいいところ。これらのことって何度も言っちゃってるけど、それだけ感心しているということで……。
鬼が今の姿をとる前って、疫病などの象徴としての、目に見えない「モノ」だったんだよね。今回はまさにその話。最後の社会的な話はちょっととってつけた感があったけど、少しうまいと思ってしまった。妖怪ハンターは、作者のライフワークと言っていいぐらい、世界観が出来上がっているなあ。
今回の最大の注目シーンはやはり「ゴッタクセン! ゴッタクセン!」だと思う。そしてそのあとの稗田先生の「ラップじゃないか!? これがご託宣?」これは笑わざるを得ないだろう……。そして有名な鰻重のシーン。稗田先生みたいに色々私生活があまり出てこない人が、こういう生活感のある行動をすると、たまらなく面白い。
あとは、名前をつけるという行為の、重さや責任とかを考えてしまった。利便性のために名前をつければ、その重さを受け止める覚悟が当然必要だね。
漫画を読んでいて思うのは、背景や服装とかの資料集めや取材って大変そうだなということ。読む側はあまり意識しない部分もきっちり描かないといけない。小説はこういった部分は極端に言えば丸投げもできるわけだし、そもそも服装の描写すらしない場合もある。まあ、諸星作品は全体的に服装は地味だし、ラブやんあたりはみんな似たような服装だったりもするんだけど。
諸星作品を読むと、九州や奈良にすごく行きたくなるし、住んでいる人がうらやましくなる。

稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター (KCデラックス)

稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター (KCデラックス)