虫と歌

市川春子『虫と歌』を読み終えた。表題作以外はアフタの誌面で読んでいたのだけれども、4作目が掲載されるぐらいまではそこまで意識している人ではなかった。つまりつい最近までということ。
でも改めて読んでみて、やはり面白いなと思わされた。昆虫であったり、雷であったり、植物であったり、流れ星であったり、人ではないものが主軸に据えられているけど、それは時に人というものを生々しいまでに映し出すし、決して淡白なものでもない。
一貫して、独特の空気がずっと話にまとわりついていて、感情も行動もその中に従って行動していて、一見あっさりしているんだけど、含ませかたや間のとりかたで、キャラクターの感情や、枠外の状況も想像できて、非常に懐が深い。ようは、世界観がしっかり構築されている。表題作の終盤の、影が移動しているところかがとても好きだ。
絵は、非常に癖がある。これになじめないと、ちょっときついところがあるかもしれない。しかし構造的に、ちゃんと漫画しているなーと思わせられる一冊だった。漫画なんですよ、漫画。

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)