ドグラ・マグラ

夢野久作ドグラ・マグラ』読了。名前を聞いたことがあるという人は多いかと思う。日本三大奇書の一冊なんて言われていて、読むと発狂してしまう……などと噂されている本である。
ある病室で目を覚ました精神病患者が、自分自身のことを取り戻そうとする過程で、ある大きな事件の中心に自分がいることを知って――という話で、一般に推理小説の枠組みに入ってはいるけど、最後まで読んで明瞭な答えを得るなんてことはまずない。様々な解釈ができるあたり、純文学的な作品だと思う。だからこそ手に取ったというのもある。
どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか、夢中遊行に夢中遊行を重ねた荒唐無稽な世界の中で、わかったのか、わかったつもりなのか、どこで意見を挟めばいいのやら、二人の強烈な博士に挟まれて主人公と一緒に読者は混乱する。
途中から、主人公はとある資料を読み始めるのだけど、これがまたえらく長く、濃い。唄、論文、対談、遺書、捜査記録、縁起など、それぞれに見合った文体で書いてあるものだから、非常に読むのが大変だった。挫折する人はこのあたりが多いんじゃないかと思う。そこを読み通せばあとは会話が多いし、かなり読みやすいことだろうと思う。
文体は、割と読みにくい部類ではないかと思う。記者をやっていたということもあって、かなり綿密な濃い文体で、資料部分とかのまとめ方を読んでいても、なんとなくそのへんはうかがい知ることができる。この作品自体も、十年以上かけて執筆されたもので、実際に読めばそれだけかかるというのはあっという間に理解できることだろうと思う。
青空文庫にも掲載されているけど、上下巻あわせて600ページ以上に渡る作品なので、表紙で躊躇したとしても文庫で読むのがおすすめ。特に頭に「……?……」をたくさん浮かべたい人は是非。この読後感はなかなか味わえるものじゃないよ。
ところで夢野久作というのは九州の方言らしい。今でも使われているのだろうか。
正木博士の存在感は異常、モヨ子かわいいよモヨ子、お兄様お兄様お兄様お兄様
……ブウウウ――ンン――ンンン…………。

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)