無関係な死・時の崖
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/05/28
- メディア: 文庫
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特に面白かったのが「誘惑者」、「使者」、「賭」、「人魚伝」の4つ。
「使者」は『人間そっくり』の元となった話。この話の中で、自称火星人が押し入ってきたことをネタに講演をしようとして、題名を考えるんだけど、最初に「偽火星人」というのが浮かんで、通俗的すぎるといって没にして、次に浮かんだのが「箱の中の論理」……これも高級すぎるといって没にするのだが、この飛躍の仕方についていけなくて、しばらくここで考え込んでしまった。ここに関しては解説を読んでなるほどと思った。
「人魚伝」は安部公房に珍しい題材だなと思ったんだけど、最後まで読むとなるほど安部公房だなと思わされた。主人公と人魚の関係を見て、国家と国民の暗喩かなとも思ったけど、それはいささか安直に過ぎるだろうな。これはなかなかの名作だ。
こうやって作品を読んでいるうちに、彼の考え方を最もよく投影している作品はやっぱ『箱男』じゃないかと思えてきた。先日、『箱男』と『密会』の単行本を買ったけど、こっちには著者の言葉がついてるんだよね。これを読むとまた違った世界が見えてくるんじゃないかと思う。両方とも文庫で持っているし、読んだけどね。再読の際は単行本で読むようにしよう。
次は安部公房は一旦休んで、三島由紀夫『金閣寺』を読もうと思う。前から読もうと思っていたからそろそろ手を出したい。