予告された殺人の記録

ガブリエル・ガルシア=マルケス予告された殺人の記録』読了。とある共同体で、双子の兄弟がサンティアゴ・ナサールへの殺害予告をする。本人以外はみんな知っているという状況になっているにも関わらず、うずまく様々な心理や偶然が重なって、結局サンティアゴ・ナサールは殺されてしまう。しかも、彼はなぜ殺されるのかを知らずに。いきなりこれを突きつけられると、その詳しい経緯が気になるというもの。そうした心理を推進力にして、非常にぐいぐい読ませる作品となっている。
読み終わった時、マルケスの描く共同体は改めて素晴らしいと思った。作者が生きてきた時代のコロンビアの情勢はわからないけれども、時代が変わろうとして新風が入り込んできて、今までのものが瓦解し始める様子が見事に描き出されていると思う。
それからやはり、構成力の凄さにも感心した。さすが記者経験があり、映画の脚本もやっているだけあって、気を使っているのだろうなというのがうかがえる。
マルケスの根底にある意識などを考えると、安部公房が彼を絶賛するのもわかる気がする。
百年の孤独』に手を出せないでいる人や、挫折した人にも読みやすくておすすめ。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)