ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』

色々立て込んでいてペースががっつり落ちてしまっていたのだけど、今日を使ってなんとかガブリエル・ガルシア=マルケスエレンディラ』読了。『百年の孤独』なんかに見られるような短編がたくさんあって、非常に面白かった。これらの作品を見ると、あまりにも日常とかけ離れているように見えるのだけど、現地の人からしたらそれほど現実と乖離したものではないようで、文化の違いを感じる。
『大きな翼のある、ひどく年取った男』、『失われた時の海』、『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』あたりが非常に面白かった。
特に三つめの表題作は、火事で家財に多大な損害を出したエレンディラが、その持主である祖母と一緒に旅をして、春をひさいで返していくという話。かわいそうとかそういう感情よりも、祖母の怪物的な強かさ、俯瞰的に見る人々の行動などの描写がとてもうまくて、感心しきりだった。何もないところから、人々が行列をつくり、店が並び、音楽が鳴り始める……こういった流れが見ていてとても面白い。マルケスは幻想的な部分だけではなく、話の構造や人物の描写のしかたも非常にうまい。だからこそ彼の世界ができあがっているのだろうけど。
訳者のあとがきも、ラテンアメリカの民話や神話的風景に則して、そういったものができる背景についても語っていたのが非常によかった。歴史的事実を神話的祖型に近づけることによって、人々の記憶にしっかり残しておくという話は興味深かった。自分が神話とかに興味があるのはこういう背景なんだよな。
ラテンアメリカの濃ゆい民話的・神話的世界、いかがですか。

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)