安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』

安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』読了。ここ最近は色々都合があってなかなか読書が思うように進まなかった。また酒を飲む機会が多かったのもある。自分が普段好きな酒をあまり飲まないのは、読書の部分もかなり大きい。
四つの作品を収めた戯曲集で、読んだ中では「愛の眼鏡は色ガラス」、「ウエー(新どれい狩り)」が非常に面白かった。
前者は精神病院で繰り広げられる話だけれども、あまりにも色々なものが交錯していて混乱してくる。しかしそこがポイントで、正気と狂気をわけわからないぐらい混ぜさせたら、安部公房にかなう作家は果たしているだろうか。戯曲はセリフが中心となってくるので、この飛躍具合がよくわかって、読んでいる自分の正気を疑ってしまいたくなるほど。
後者も区別がつかなくなるという点では似ていて、小説なら『人間そっくり』に近い。珍獣ウエーはまさしく人間そっくり(というよりも人間なのだが)。しかし、ウエーと人間との境界が見つけられず、自分の立ち位置が揺らぎ始める。自分は安部公房のこういう部分が大好きで、毎回感動が止まらない。
戯曲では舞台を頭の中で想像するので、小説とはまた違った演出方法になって面白い。もちろん実際に公演を見られれば一番なのだけど。
欲しかった本が手に入ったので、これからしばらくは北海道史の本を読もうと思っている。おそらくメモをとりながら。

緑色のストッキング・未必の故意 (新潮文庫)

緑色のストッキング・未必の故意 (新潮文庫)