引越し

四月頃の肌寒さを引きずったままの六月となった。運動会が終わった頃になってようやく二十度を越える暖かさがやってきて心地良くなったのに、風邪をひいたらしく喉を痛めてしまった。幸い熱がないので、早いうちに片付けてしまいたい。
それから今月、引越しをすることになった。念願の一軒家で少し古い家ではあるが、細部に前の人のこだわりを感じるし、家と同じぐらいの敷地の庭もある。そして今度の自室はなんと十四畳……。今までの六畳では足りないとは思っていたが、まさかここまで一気に広がるとは思いもよらなかった。細かいものを先に運んでしまえば、自分のものはそれほど多くない。というよりも、細かいものがやたら多いんだ。
今使っている本棚は弟にあげることに決めた。この無垢材を使った本棚は物心ついた時から使っていたもので、家具職人だった親戚が作ってくれたものだ。継承とかそういった信念からではなく、この本棚の重さが尋常ではないので、労力の消費を考えた結果、一階の弟の部屋に置こうと決めただけだ。しかしこの本棚なら、弟が使わなくなるまで用を足すだろう。次の部屋では本棚は二つ置かないとだめかもしれないな……。

坂口安吾堕落論

Twitteraozora_botというボットがいる。青空文庫からランダムで発言をしてくれる文学ファン垂涎のボットだ。そこでたまに坂口安吾の言葉が流れていて、それが妙に共感できる部分が多くて気になっていた。特に文学や創作に関しての意見はうんうんと頷きながらふぁぼったりしたものだ。
そこで評論集である『堕落論』を読んでみようと思った。最初はすごく怖い人のように思っていたのだけれど、読んでみると非常に気持ちよく意見を述べて、自分の弱い部分もしっかり出していて、意外に正直な人なんだなと思った。
文学に関する部分や、「日本文化私観」などは、既存の価値観に対する疑問などに鋭く切り込んでいる。単なる写実の批判、FARCEの素晴らしさ、機能美についてなど、現代にも通ずると思われる部分がたくさんある。戦争や政治の話においても、批判する一方で、それが持つ魅力についても包み隠さず述べているのは大変良かった。
「芸道に於ては、常時に於てその魂は闘い、戦争と共にするものである。」という言葉が特に印象に残った。開高健もこれに近いことを述べていたと思う。具体的に述べている分、こちらがわかりやすいかもしれない。
案外、安部公房なんかと合うのではないかと思う。ちなみに安部公房芥川賞を取った時の選考員も務めている。安部公房の作品には否定的ではあったけど。
全体的に文章はやや読みにくい傾向で、内容も簡単ではないので、また読むことになるだろうと思う。特に、日本の伝統を重んじる人は「日本文化私観」を一読してみてはどうだろう。

堕落論 (新潮文庫)

堕落論 (新潮文庫)