憧憬

最近、ギネスビールにはまっている。ドラフトとエクストラスタウトを試したが、どちらかといえばドラフトの方が好み。ギネスグラスも現在四つある。
そもそも自分はビールが苦手だ。付き合いでならなんとか飲める程度で、例外といえば餃子の時ぐらいだろう。そんな自分が飲めるどころか、渇望するようになったビールがギネスだ。ビールが好きな人にはむしろ、ドラフトギネスは薄味で炭酸も弱くつまらない味かもしれない。しかし自分にはほのかに感じる深い苦味に感じた。赤ワインに近いものすら感じる。基本的に味の方向性が他のものとは違うのだろう。
ドラフト缶に入っているフローティングウィジェットにも驚かされた。最後の最後までしっかり残るきめこまやかな泡が缶で作れてしまう。泡までしっかりおいしい。
ギネスを飲もうと思ったのは、味とは別のところにあった。自分がホイッスルでアイリッシュ音楽をやっていたからだ。アイリッシュ音楽をやっていれば、自然アイリッシュパブのことも知ることになり、ギネスビールのことも入ってくる。そもそもホイッスルにさえ、ギネスを模したモデルがあるほどだ。それほどまでにアイルランドの誇りになっているのだなと強く感じる。そこでそれがいかほどのものか飲んでみたくなったのが始まり。
当然こうなれば、アイリッシュパブのギネスを飲んでみたいという欲求が高まる。機会があれば是非味わってみたい。

安部公房終りし道の標べに

安部公房の処女作。文庫にしても値段がそれなりにするので、なかなか手を出さなかった。
本当の故郷を探して飛び出した主人公が匪賊の虜囚となり、その監禁先で書いたノートという形式をとった話。話とは言うが、実際は小説的な表現は非常に少なく、終始主人公の故郷に対する渇望と、自分の存在に対する自問自答が大部分をしめている。
非常に哲学的で難解な話で、若者がいかにも書きたがるような思想表明的な小説だ。しかし読んでみれば、この本の中に流れている思想が、後の安部公房にもずっと流れていることがはっきりとわかる。
安部公房満州奉天で育っていて、農村と都市部の関係、引き揚げによる故郷喪失などが、後の発想のバネにはなっていると本人も語っている。
最初に読む作品としてはとてもおすすめできないが、ある程度安部作品を読んできて自分の見方が確立されてきた人はやはり一度読むべきだと思う。まさに原点。

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)