コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』

ものものしいタイトルではあるが、その筋では有名過ぎる一冊。かの金子一馬氏もこの本の影響を多大に受けていると思われる。
この原著の初版が発行されたのが1818年。当時のフランスにおいて噂されていた不思議な出来事や、悪魔に関することなどをまとめていて、非常に密度の濃い一冊となっている。この本は原著を約十分の一にまで絞ったもので、それだけでもプランシーの収集に対する執念が伺える。
この本は、いわゆる神や悪魔単体の紹介本的な要素は薄く、先に述べたように当時の人々の間で語られていた悪魔観を凝縮したものと思っていい。その項目は悪魔それ自体のみならず、オカルト現象やサバト、悪魔憑きやほんの小さな話、はたまた実在の人物に関してまでもがあり、範囲もヨーロッパだけに飽きたらず、日本も含め世界中の話を掲載してある。
ただ結構間違いや誤解なども多く、精緻な資料としての価値はあまりない。そして著者であるプランシーは、後にカトリックに改宗しており、その後の版から文章そのものはカトリック寄りとなっていて、ここら辺の考察に及ぶとかなり曖昧さが目立つ。しかしこのぐらつき具合も、ある意味この本の味なのかもしれない。現に思わず笑ってしまうところもいくつかあった。
当時、悪魔がどのように人々によって語られていたか興味がある人は、是非読んでみてほしい。

地獄の辞典

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