石の眼

海腹川背DSを買ったことは前回の記事の通りだが、それに加えてRPGツクール2000も買っていたので、読書に身が入らなかった。今年は北海道でも信じがたい暑さになったのもあるだろうが、ゲームというのは本当に時間食いだ。
しかし多少は落ち着いてきたので、しっかり本も読もう。

安部公房『石の眼』

漏水問題が起こってその対処でもめるダム建設現場が舞台の話。安部公房には珍しく直接的に社会派な小説だ。それに加えてミステリ的な手法をとっていて、それが更に安部公房らしさを感じさせない。
ある一つの出来事がきっかけで、犯行が可能な人物達は異常ともいえるまでの疑心暗鬼に陥り、互いの行動のひとつひとつが自分を陥れるための画策ではないかと思う。
最後に安部公房らしいラストが待っているのではないかと睨んでいたのだが、推理小説らしい幕切れだった。これはこれで、ダム建設と政治的な結びつきをよく描写できてはいると思うのだけれど、二年後に『砂の女』が書かれていたことを考えると、安部公房に期待していたことはあまりにじみ出てきていない気がする。
それでも、「ネズミ」が入り込んだことによって事態が動き出す様子は、読んでいて面白かった。それと反対派の狂人があまり活かされていないのが意外だった。

石の眼 (新潮文庫 あ 4-10)

石の眼 (新潮文庫 あ 4-10)