Rosbeg / ソニー・ラブ=タンシ『一つ半の生命』


最近はFlookのRubai収録のRosbegをF管ホイッスルで練習している。動画はフルートだけど、非常に暖かみがあって好きな曲だ。非常に簡単そうに聞こえるが、シンコペーションの多用でややリズムが取りにくくなっている。とはいえそこまで難しいわけでもない。吹く気持ちよさを味わうにはいい曲だ。Brian Finneganは意図的にシンコペーションを多用してくるスタイルで、この辺の貪欲さが好きだったりもする。彼の作曲したリールやジグのクオリティが高いのは、そういう姿勢もあるのではと思う。7拍子の曲もあるしね。
大分、スライドの使い所の勉強になる曲だなと思う。F管は速いフレーズもやりやすく息も楽で、かつ深い息の表現ができるので個人的に好きな管だ。
調べた限りでは、Rosbegは地名かな? アイリッシュ曲にはタイトルに地名が入ったものが非常に多い。北海道なら、羽幌の風とか、積丹リールとかになるのだろうか。ずばりダブリンというリールもある。
後は他のFlook曲の再解釈(ジグかスリップジグかなど)などをした。リズムの解釈の違いで大分曲の雰囲気が変わってくるので、なるべく両方を取り入れられるようにしたい。
それから前回注文したA管ホイッスルは偶然にも在庫があったので、こちらだけ先に届いた。ちょうどハイとローの中間ぐらいのキーで、Abよりは結構細い。ただ指的に、このA管ぐらいから、ストレートフィンガーにしようか迷う人も増えるのではないかと、触ってみて思う。ちなみに自分はAもAbも通常の、指先の腹を使った押さえ方だ。F管はストレートフィンガー。これから始める人は、こういうところでも気になるのではないかなと思うので、書いておく。ただ、吹きにくくなければどちらでもいいというのが本音ではあるのだが……。

ソニー・ラブ=タンシ『一つ半の生命』

シャイダナが十五歳の頃のことだった。時代はというと。時代なんかくたばっちまった。

いきなりこの書き出しで始まる。なんだこいつは。最後まで読めばわかります。
架空の国カタマラナジーの指導者は、政敵であるマルシアルの喉にナイフを突き立てる。しかし彼は一向に死なない。ばらばらに切り刻まれても死なない。その後も彼はことあるごとに喉から血を流しながら姿を表し、血のメッセージを残し、料理を作り、シャイダナに平手打ちを食らわせる。その一方で、マルシアルの底流が着々とできつつある。カタマラナジーは凄惨なまでの独裁国家だ。さからうものは死けい! というのは日常茶飯事であり、この辺の描写はマルケスの『族長の秋』にも通ずるものがある。しかし決定的に違うのは、独裁を行なっている指導者の人物像が一向に掘り下げられないことだ。同情する間もなく彼らも暗殺されたり、自殺したりと、その忙しさばかりが目に入る。その中において確かなのは、マルシアルの反抗の炎が、あらゆる時間を越えて作用しているということだ。
やがて新たな国家が、シャイダナの娘が中心となって作られる。ついにマルシアルの炎は国家という形となって燃え盛った! と思ったのも束の間、新生国家ダルメリアとカタマラナジーは戦争状態に入り、肩入れした国をも巻き込んでの終末戦争へと発展する……。蝿の兵器によって、国はふっとぶ。時間もふっとぶ。ナイル川ができる。時代なんかくたばっちまった。
マルケスよりもかなりストレートに、神話的世界を創造し、悪夢をそのなかに見事に投影している。中盤と終盤でこれほど印象が変わる小説も珍しい。しかし彼が小説を書くということに感じている使命は、ラテンアメリカ作家達のそれと変わらない。熱帯的エネルギーに満ち溢れ、絶望的に、かつ滑稽に、世界を描き出すことに専念している人だということがわかって、大きな収穫となった。他の作品も是非読んでみたい。

一つ半の生命

一つ半の生命