ロラン・バルト『物語の構造分析』

かれこれ四年ほど興味があって、今回ようやく読んだ。タイトルを見て興味を惹かれる人は結構多いように思うのだが、言語学や哲学、構造主義の基本を知っていないと、自分みたいに頭に疑問符が沢山浮かぶことになるかもしれない。
メインである『物語の構造分析序説』の中で特に目を引いたのは、機能体と指標の部分で、普段読んでいる小説の構造(特に長編)を理解する上で重要かつわかりやすい部分かもしれない。色々と細分化された用語がでてくるので、メモがないと辛いと思った。次回はメモを用意しよう。
これと同じぐらい関心を持ったのが『作者の死』。作者というものと作品の乖離、読書と批評について素晴らしいことが書かれている。作品に表れている思想が、必ずしも作者とは一致しない。作品は作品として受容すべきという内容に感心した。
もちろん、完全に作者の影すらもなくすというのは難しいことで、作品を楽しむ材料として作家のことを調べるのは、読書においては当たり前に行われることでもあるので、関係ないといいつつも作者の残滓を探すのは読者のサガみたいなものだ。自分は作品は作者の持ち物で血肉ではないと考えているので、この『作者の死』は色々と共感しつつ考えさせられる文章だった。安部公房読者などには、大いに関心のあることだろうと思う。
それほど厚くないので読むのも楽だろうと思っていたがとんでもなく、かなり時間がかかってしまった。内容はかなり難解だ。しかし読み応えがあり、また再読したいと思わせる本だった。こういった本のあとには小説が恋しくなる。

物語の構造分析

物語の構造分析