読書

引越し

四月頃の肌寒さを引きずったままの六月となった。運動会が終わった頃になってようやく二十度を越える暖かさがやってきて心地良くなったのに、風邪をひいたらしく喉を痛めてしまった。幸い熱がないので、早いうちに片付けてしまいたい。 それから今月、引越し…

北海道の歴史がわかる本

桑原真人・川上淳『北海道の歴史がわかる本』を読了した。 ある時考えた。自分は北海道に住んでいてかつ、北海道が好きでいながら、その歴史については驚くほどに無知ではないかと。恐らくそういった理由でこの本を選んだ人も多いのではないか。 北海道の持…

安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』

安部公房『緑色のストッキング・未必の故意』読了。ここ最近は色々都合があってなかなか読書が思うように進まなかった。また酒を飲む機会が多かったのもある。自分が普段好きな酒をあまり飲まないのは、読書の部分もかなり大きい。 四つの作品を収めた戯曲集…

ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』

色々立て込んでいてペースががっつり落ちてしまっていたのだけど、今日を使ってなんとかガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』読了。『百年の孤独』なんかに見られるような短編がたくさんあって、非常に面白かった。これらの作品を見ると、あまりに…

夢野久作『少女地獄』

彼女は罪人ではないのです。一個のスバラシイ創作家に過ぎないのです。単に小生と同一の性格を持った白鷹先生……貴下に非ざる貴下をウッカリ創作したために……しかも、それが真に迫った傑作であったために、彼女は直ぐにも自殺しなければならないほどの恐怖観…

コーヒーと怪奇談

この間、以前から気になっていた店に行ってきた。コーヒーの専門店で、小さな喫茶スペースもあるところ。小さな店内にコーヒー豆の香りが満ち溢れて、強風の中歩いてきた疲れが飛ぶようだった。 一杯250円と値段も安い。ブレンドを頼んで飲んだのだが、エッ…

安部公房『友達・棒になった男』

忠義や、忠誠も、あんまり度をすぎると、はためいわくだよ。蝦夷地に行ったら、みんな、自分が自分の殿様なんだぞ。 『榎本武揚』 戯曲というものは初めて読む。登場人物とおおまかな特徴が書いてあって、背景の指定と、かっこでどんなふうに読めばいいのか…

体調崩す

三月は一年の中で最も苦手な月だ。いいことも悪いことも急激な潮の流れのように動く。自分の中ではとにかくイベントの多い月という認識。 今週の初め頃から、喉の調子が悪かった。乾燥のせいだと思っていたのだけど、湿度計を見てもそこまで乾燥してはいなく…

カミュ『異邦人』

カミュ『異邦人』読了。自身、他人に素直に生きている主人公ムルソーが、芝居を強要する社会に糾弾されていくのは恐怖を感じた。 養老院に預けた母親の埋葬の際、泣いていない、悲しむそぶりすら見せていないという理由で、検事に責められるところは、憤慨す…

オネガイダカラ タスケテヨ

箱はただのダンボールではなかった。硬化プラスチックなみの粘りと堅さ。 正面に覗き穴があった。郵便受けほどの、切り穴。 覗いてみた。ぼくの後ろ姿が見えた。そのぼくも、覗き穴から向こうをのぞいている。 ひどく脅えているようだ。 ぼくも負けずに脅え…

小沼丹『懐中時計』

小沼丹『懐中時計』を読了した。この短編集を読むのは三度目。昔はこの本が放つ、のどかな田舎の景色に感動をおぼえたりしたものだけど、今では特にそういったものを小説に求めてはいない。 この本には、大寺さんという人物を主人公にした短編がいくつか収め…

村のエトランジェ&あまんちゅ!

小沼丹『村のエトランジェ』 そこで僕はテニスのルウルを簡単に説明してやった。しかし、聞き終った彼女はこう云った。 ――あらまあ、サアビスなんて、変なこと云わないでよ。あたし、サアビス上手いのよ。 来た翌日、彼女は着ていたワンピイスを洗濯した。と…

予告された殺人の記録

ガブリエル・ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』読了。とある共同体で、双子の兄弟がサンティアゴ・ナサールへの殺害予告をする。本人以外はみんな知っているという状況になっているにも関わらず、うずまく様々な心理や偶然が重なって、結局サンティ…

神道の本

学研『神道の本』を読了。同シリーズの『妖怪の本』を以前読んで、カラーや写真も多くて面白かったので今回も選んでみた。 文章を書いている時、そういえば自分は、神道のことってあまり知らないなと思ったのがきっかけ。自分は初詣等をする習慣がないので、…

【追記】柳川どじょう

小数巻 今月のコミックリュウに、ネムルバカの1.5巻がつくとのことで、うまいこと商売しやがるなと思いながら書店をうろついたのだけど見当たらない。他に欲しい本もないし店員に聞いてみると、明日入荷とのこと。なんで雑誌が遅れているのだろうか。 『ネム…

森見登美彦『きつねのはなし』

森見登美彦『きつねのはなし』読了。森見作品は文庫化されて再読した『夜は短し歩けよ乙女』以来だ。 その名の通り、きつねのはなし。内容的に言えば、本来の森見登美彦に見られるような、饒舌でポップな幻想とは少し違う、陰鬱な怪奇・幻想小説といったとこ…

鏡の国のアリス

「あのう、白の女王さまに来ていただけたんでしょうかしら」「そう、ねえ、あたし、あんたを着るなんて」と女王さま、「そんなつもりは毛頭ありませんからね」 ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』読了。年末に『不思議の国のアリス』を読んだので、この際だ…

安部公房『カーブの向こう・ユープケッチャ』

安部公房『カーブの向こう・ユープケッチャ』を読了。短編集だけど、「カーブの向こう」は『燃えつきた地図』へ、「チチンデラ ヤパナ」は『砂の女』へ、「ユープケッチャ」は『方舟さくら丸』へと後に長編化されている。「カーブの向こう」なんかは、『燃え…

不思議の国のアリス

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』読了。年内はまとめだけ(キリッ とか言いながら、ぎりぎりで読了できたので書いておくことにした。 もはや説明などいらないぐらいに有名な話だけど、ディズニーのですら見ていない自分は何でそこまで読みたくなったかと…

安部公房『R62号の発明・鉛の卵』

安部公房『R62号の発明・鉛の卵』を読了した。昭和二十八年から三十二年に発表された作品を収めた短編集。 結構身構えて読んだのだけど、意外とすんなり読める作品が多くて肩透かしをくらったのだが、「棒」を読むと、キタコレという感情が沸き上がってきた。…

幻想世界の住人たちII

健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たちII』を読了。安部公房を読みますと言っておきながら、気になってしまってそのままIIを読んだのだけど、続き物的な扱いになっていて、カバーしきれなかった地域の補完や、Iと合わせた幻想生物の分布地図まで載っていると…

幻想世界の住人たち

健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たち』読了。各地の伝承や神話などに登場する様々な住人にスポットをあてた本。全体的にヨーロッパ寄り、神単体よりは妖精、小人、精霊等、種族としての紹介が多い。 この本を読んでいいと思ったのは、歴史的な事実等と絡め…

ドグラ・マグラ

夢野久作『ドグラ・マグラ』読了。名前を聞いたことがあるという人は多いかと思う。日本三大奇書の一冊なんて言われていて、読むと発狂してしまう……などと噂されている本である。 ある病室で目を覚ました精神病患者が、自分自身のことを取り戻そうとする過程…

風に訊け

開高健『風に訊け ザ・ラスト』を読了した。前巻も今年の初めに読んで、感想も書いた記憶はあるんだけど、せっかくなのでふたつまとめて。 週刊プレイボーイでやっていた開高健の人生相談を書籍化したもので、ライフスタイルアドバイスと銘打ってはいるが、…

飢餓同盟

安部公房『飢餓同盟』を読了した。最初はちょっとストレートすぎるなと感じたいたのだけれども、後半を読み進むにつれ、どんどん面白くなっていった。 地震によって温泉が出なくなった、掃き溜めのような町「花園」。排他的で内輪で物事を進める(例えば町議…

金閣を焼かねばならぬ

三島由紀夫『金閣寺』を読了。読了といっていいものか、何度も同じところを行ったり来たりし、眠たい目をこすりながら読んでいた。 1950年に起こった金閣寺の放火事件を題材にした小説。学校でも習う有名な事件だね。金閣は実際に見に行ったけど、これは再建…

無関係な死・時の崖

無関係な死・時の崖 (新潮文庫)作者: 安部公房出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1974/05/28メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 21回この商品を含むブログ (45件) を見る安部公房『無関係な死・時の崖』を読了した。短編集なんだが、安部公房の短編というのは…